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百合や二次創作 警報発令。デニムや二輪もあるよ。

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タイムリミット

「Time Limit」


やや傾いた午後の日差しと、ついほんの先程、号泣からすすり泣きへと変わったペリーヌの声で賑やかだった病室は静寂に包まれている。

坂本はうたた寝から目覚めた。

その部屋は、うっすらと紅味がかかった黄色に近い光で台形に染まった天井と、鈍い金色に輝く医療機器が静かにあるだけで、規則的な坂本の脈拍を計測し、波紋に現わし、音で鳴らす機械だけがただ、動いていた。
 
自分の中で循環する血液の動きをこんな風に表現される時が来るとは思わなかった。もっと文学的なものか音楽的なもので鼓動というものは表現されるものだと坂本はこの時まで思い込んでいた。
 「結構、味気ないものなんだな。」自分たちが毎日必死ですがっている〝生きているということ〟は。機械にとってみたら、こんなものかと坂本はまだ醒めきっていない頭でぼんやりと思った。

 「そういえば、ミーナは大丈夫なのか?」とりあえず、自分は生きている。他の隊員も病室内を窺う限り大きな外傷はないようだ、と坂本は部隊の被害状況を大まかに把握した。

きっとペリーヌは大騒ぎしたに違いない、日が傾いている今は多少は落ち着いた頃だろう。そうなると今回のことで一番参っているのは坂本の負傷の現場に居て、かつ治癒魔法を駆使したに違いない宮藤あたりだろうか、坂本はさらに考えた。
「宮藤にはリーネが付いている。」他の隊員も彼女のことを放ってはおかないだろう。
こういうときにバルクホルンやシャーリーといったベテランと隊内で称される面子には非常に助けられる。
 
と、そこで坂本は真っ先に頭に浮かんだにも関わらず、やっと自分が思いやるに至ったミーナについて考えた。
「ミーナはどうだ?」あいつもかなり参っているに違いない。
彼女には古くからの仲間であるカールスラント組と言われる連中がついて居るが、彼女たちはきっと宮藤にかかりっきりだろうし、ミーナもまたそれを望んでいるだろう。と。

 執務室でただ一人、埋まらない書類を前にして、乾ききったペンを手に、微動だにしてないのではないだろうか。
困ったやつであるのはこうやって医務室に横たわっている自分自身には違いないのだが、「本当に、困ったやつだ。」と坂本のパサパサに乾いたくちびるからため息のような声が漏れた。
カールスラント軍人はみんなして堅過ぎる。いや、ハルトマンは別だが。
 
ミーナはきっと部隊の一同が落ち着きを取り戻すまでこの病室のドアをノックすることはないのだろう。
それまで、ただひたすら眉間にしわを寄せながら書類やら反吐が出るような司令部からの命令やら、至る所から迫る、この部隊を陥れようとしているとしか思えない施策と闘っているに違いない。

 いや、むしろ彼女は感情や衝動と闘っているのだろう。

「不器用なやつだ。」あんなに器用に、むしろ優雅に何事もこなす彼女が、どうして坂本と彼女自身に対してはあんなに不器用なのかと坂本はいつも疑問に思う。「あいつらしくしていれば何の問 
題もないはずなのにな。」と。

 急激に強烈な眠気が坂本に広がってゆく。「うたた寝をしている間に、痛み止めでも打たれたか。」思考の半ばで、坂本は深い眠りへと落ちていった。





 …坂本はかなりの時間眠っていたらしい。
頭を使うと体力を消耗する、ということなのか単に痛み止めによる誘眠作用なのかはわからないが、先ほど薄い柑橘色に染まっていた医務室の天井は深い紺色一色にその様を変えていた。

 ぼんやりと同僚のことを考え切る体力も残ってないほどに憔悴しているのだ。と、しんとした夜の静けさに浸かりきった病室の
暗さに不自然に浮かび上がる計器類の灯を眺めながら坂本は考えた。
 目に映る計器の、普段は見慣れているはずの人工的な光が今は少し煩く、そして明るすぎるように感じた。
 
 自分の体にあんな風に、うるさい音と光を出す機械に反応させるような余力があるのならば、少しはミーナについて考える頭の方に分けてやってほしいものだ。と坂本は思った。
「いや、奴らは反応しているだけだからな。」自分の中に半ば苛立ちのような発想が生まれたことに坂本は少し驚いた。
 
 一体自分は何に腹を立てているのだろう?何を求めているのだろう、と普段は感じない八当たりに似た感情に坂本は思考を巡らせる。
 「そんなもの」が浮かび上がってくる多少の余裕が出てきたということは、自分の体は今〝生きる〟ことに支障はないらしい。
そのことに、とりあえず納得した坂本は改めて病室を見渡した。 

 これまで数キロ先のほんの小さな物体さえもとらえることができていた右目は、今はようやく月明かりを拾い、無様にベッドの上に寝っ転がっている坂本の胴体と、かなり無理をすれば動かせる視界に入る天井やらカーテンやらの輪郭をぼんやりとうつすことができるだけだった。
 
 ふと「わたくしそこまで視力が悪いわけではございませんのよ!」と何かの時に真っ赤な顔をしてエイラに噛みついていたペリーヌの姿を思いだした。

戦闘にわずかでも、不安要素があるといけませんから、こうして普段からメガネを着用しているのです。「あなた方は少しお気楽 
過ぎて、本当にお付き合いしづらくてよ!」等とその後言っていたような気がする。エイラはそんなペニーヌを「ハイハイ、ツ
ンツンメガネとはこっちも付き合い難いンダナ。」と軽くあしらいつつ、サーニャの許へ淹れたてのコーヒーを運んでいた。

 備えあれば、憂いなし。ペリーヌもまた、立派な武人だ。
 
 しかし、縁起でもないうえに上官として失格な想像だが、仮にペリーヌが負傷してしまった場合、メガネをかけたままベッドに転がされるのかどうか。坂本は考えた。
自分の眼帯は外されていた。ということはペリーヌのメガネもきっと外されているに違いない。
 目を覚ました時に真っ先にメガネを探すであろう彼女と、その姿を見て安堵しつつも笑い転げるであろうエイラとシャーリー、ルッキーニの様子と、その役目は宮藤あるいはリーネになるだろうか、真面目な顔でメガネを差し出す姿を想像して坂本の顔に思わず笑みがこぼれた。

 「ミーナは」と、その言葉が頭に浮かんだ瞬間。ああ、逃げているのだな私は、と坂本は判った。ミーナのことを考えたい。などと言いつつも想像以上に疲労するからか、考えたくない理由があるからかは分からないがとりあえず、自分は今ミーナについて考えることから逃げているのだ。
考える余力が無いなどと言いつつ、おかしな想像に逃げる力は残っているんだな。と坂本は自分自身に苦笑した。
 
 背を向けて逃げるくらいなら、いっそがっぷり四つで組み合った方がよほど楽であるし、潔い。ただし、今は逃げている。
ならば、自分では気が付いていないが三十六計逃げるにしかず。というところなのだろう。
 
 こういうときは眠ってしまうのが一番良い。思考を唯一自発的に黙らせる方法を坂本は他に知らなかった。
軍隊生活で長生きしたければ「いつでも、どこでも寝られるし
食える。」ということを実行し続けることだ、とかつての上官が言っていたことを思い出した。


 しかし、追いかけっこはいつかは終わる。


 不意に病室のドアが遠慮がちに2回たたかれた。特殊魔法など使えなくても判る、ミーナだ。
「美緒、入るわよ。」と断りを入れた後、しばらくの間を置いて静かにドアが開かれた。
 月の光と人工の波形のみが照らす病室に、ぼんやりとした廊下の光が帯状に差し込む。少し眩しい。

 結局、がっぷり四つになるんだな、扶桑撫子は。逃げるのはやはり得意ではないのだ、と坂本は苦笑した。

 「起きてたのね、さっきは寝てたから安心してたのに。」と言うミーナに、普通は逆じゃないのか?と坂本は軽く答えた。
「あなたは、起きていると何を仕出かすか分からないから、寝ている方がよほど安心なのよ。」とミーナは看護人が腰掛ける為にだけ置かれてある簡素な木製の椅子を軽く引き、腰をおろした。

 「長期戦、か。」全く、負傷兵が撤退中に長期戦とはどこまで今夜は酷な夜なんだろうと、坂本は心の中で考えていた。

そんな言葉をただ深くため息をつくことで坂本は頭の隅に追いやった。
 
そんな坂本を見つめ、ミーナは「だから、もう飛ばないでって言ったのに。」と絞り出すような声で言った。

 「それはできないと言っただろう。」私はまだ空でやらねばならないことがある、と伝えた。お前はそして、私を止めなかった。
こうなったのは必然だよ。もちろん、こんな有様になったのは私の判断ミスもあったと思うが。「お前が部下の一人が負傷した、  
ということ以外で頭を悩ませることは何一つ無い。」そこまで一息で言った坂本に「あなた、本当にそう思ってるの?」それが扶桑撫子の本心というやつなの?と質問だけを投げかけ、ミーナは目を伏せた。

 お前だって、飛ぶはずだ。自分の限界がとっくに過ぎていると分かっていても、飛ばざるを得ない奴だ。「違うか?」痛み止めの薬が効いているとは言え、坂本の体全体を熱いのか痛いのか形容し難い感覚が覆っている。
 かなり無理をして坂本は上体を起こした。「…やれやれ、本当に満身創痍だ。少し痛みに顰めた顔を見られなかったのは幸いだ。」
そう思いながら目の前に座るミーナを改めて見つめる。
 執務室に座っていることの多いミーナの顔を見下ろしながら話をすることは多いが、この距離と視線の高低差は新鮮だ。

 「どうせ、長期戦になるのだろう?普段とは違う話をしないか。」坂本はつぶやいた。「あなたの傷の負担にならない範囲でなら。」そう言ってミーナはベッドの端に両手を置き、指を組んだ。

 坂本はしばらく黙って自分の脈をただ計測しているだけの装置に目を遣り、そしてミーナに視線を戻し、口を開いた。
「来ると分かっている出来事をただぼんやりと待つか。それに対して最大の努力をするか、見ないように気がつかないように生きていくか。どれも勇気のいる選択だと思っている。」
この世の中、来ると分かっている出来事ほど良心的なものはない。「我々のような生き方をしている人間ならばなおさらだ。」きっとお前も悪あがきする方なんだろう、と思う。だからさっきお前も飛ばざるを得ない奴だ、と言ったんだ。

 「水を、少し貰えたら、ありがたい…。」坂本はコップではなく湯呑に入れられた水に、目の前にいる女性の心遣いの細やかさを見、思わず目を細めた。ゆっくりと水を口に含み、坂本は頭の中で言葉を編む。

「若い連中にはまだわからなくてもいいと思う。」ただし、お前にはそろそろ差し迫った問題だ。違うか?
ミーナの顔が少しこわばる。そういう顔を見たくないから、こういう話はしたくないのだ。と坂本は心の中で自分の口から発せられた言葉に舌打ちをした。

 もはや、戦に近い会話は始まっているのだ。自分も、相手も傷を被ってしまう結果になるとしてもそれは最後まで為されねばならない。
坂本は珍しく苦々しい表情を隠さないまま、話を続けた。
「若い頃には、その時にしか得ることのできないことを得るべき
だし、時が迫ったときに必ずしも皆が私のような思いをするとは限らない。」ただ、お前には「タイムリミット」を経験した者
として、私なりの正直なところを伝えておきたい。

 本当はこんな話をしたい訳ではない、もっと暖かい日向ぼっこのひと時のような、これまでの日常の連続ような話をしたいのだ。
目の前で目を伏せたままの彼女をさらに、さらに追い込むような話題は絶対に避けたいことなのだ。

しかし、他の何時何処でこんな話をしろというのだ。
「全く、今夜はなんて夜なんだ。」と坂本は扉がノックされたあの時、寝たふりの出来なかった自分に腹立たしさを覚えた。

 「私が連中に示したことは将来なにかあったときに必ず乗り越えられる必勝法じゃない、そんなものは残念ながら存在しないうえに、個人それぞれで状況を含めて違うはずだからな。」手持
ちの武器のうちのひとつ、喩えて言えば、そうだなポケットナイ
フのようなものだ。「あ、そういえばこんなものがあったんだ。」
と思いだす程度のものでいいと思っている。

 そんなものだ。飛ぶことや落とすことについて一人前に育てても、人生はそれだけじゃない。
もっと、重たくて逃れられなくて、無条件に、しかも平等に必ず訪れるものがあるからな。
「私はそれについて、私なりのやり方を連中に示した。」ただそれだけのことだ。と坂本は少し自嘲気味に言葉を切った。

 「随分…犠牲の多い、多すぎる教育であり、上官として友人と
して咎めざるを得ないわ。」と少し怒気を含んだ声でミーナは吐き捨てるように言った。

 吐き捨てられた言葉から随分時間が流れた後、ミーナは、坂本を珍しく非難するような視線でまっすぐに見つめ、はっきりと口にした。 
「あなたは自分を一体何だと思ってるの?こんなになってまで。
皆が皆あなたの真意を酌めるとは思えないわ。」少なくとも、私はあなたが行ったことについて、理解はできるけれど共感はできない。

 場の空気を読まない、というのはこういう奴らのことを言うのだろう。無神経に規則正しいリズムを刻む人工の光と音に坂本は無性に腹を立てていた。こういう会話は、月明かりだけが頼りの、相手の苦痛にゆがむ顔が見えない程度の明るさと静けさの中でこそ行われるべきだというのに、と。

 しかし、坂本はその苛立ちと心に鋭く刺さったミーナの言葉を口に含んだ水と共に飲み込み、なお続けた。
 「私はただ飛んだ、そして落ちた。だが生きている。」傍から見れば、無様で無責任で運が良いだけの結果かもしれない。
「だがな、私は生きている。」だからお前に同じような思いはさせたくない。
「つまり、なんだ…焦ってほしくはないんだ。」

 坂本は「そうだ、私は彼女が焦り、悩み、苦しむ姿を見たくはないのだ。」と、はっきりと悟った。

それならば、そう素直に伝えればいいだけのことではないか。
坂本はもうお互いに十分過ぎるほど傷ついた戦を再開した。

お前が同じように飛ぶとしても、焦らないでほしい。「焦って若
い連中に教えなければならないことは、私が叩き込んだつもりだからな。」もしかしたら、お前がタイムリミットを迎えるその
頃にはこの戦は終結しているかも知れないしな。と、かなり薄い希望をこめて坂本はつぶやいた。

「『焦る』というものは正直、気持ちの良いものでもないし格好の
良いものでもないからな。」お前だって私が惨めなほど焦っていたのは分かっていたのだろう。「同時になぜか、お前まで焦りを見
せはじめたことに当惑したがな。」とそこまで口にしてやはり疲れたのか、枕に体を預けて坂本は目を閉じた。

 ミーナはしばらく視線を窓の外の薄ぼんやりとした空に向け、そのままの視線で「私が焦っていたのは、あなたが焦っていた理 
由とは全く異なることが理由よ。」その原因があなたのウィッチとしてのタイムリミット、という全く同じものだったとしても。とごくごく小さな声で口にした。

 「前にも言ったわ、私はあなたを失いたくない。タイムリミッ
トが近づき、あなたが飛ぼうとする度に、そしてその為の努力を重ねる姿を目にする度に私は焦ったわ。」なぜなら、その瞬間
瞬間に私の中であなたを失うかもしれない可能性はものすごいスピードで増殖していたから。そう言うミーナの頬は既に涙で濡れていた。

 この人の、涙を流す姿など二度とは見たくないものだ。こんなものを瞳に映させる人工の光と、じわりじわりと闇に目を慣らさせた月の光を本当に坂本は憎く思った。
同時に、やはりこんな会話は必要ではあっても、するべきではなかったのだと思った。

 少しだけ声の調子を上げ、坂本は普段の優雅さを感じさせない、
寧ろ幼い子供のような仕草で涙をぬぐうミーナに語りかけた。

「しかし、その焦りの原因はもう消え失せたわけだ。」もはや私
は空に上がるつもりは無い。「本国の連中も、ここの連中もシール
ドの張れないウィッチなど必要としていない。」そして何より、私自身連中やお前に伝えたかったことは伝えきったと思っているからな。

だからもう、お前が気に病むことも焦る必要など何処にもないのだ、と。
 
 「あなたは、いつもそうやって後付けで私を納得させようとするのね。」と坂本の気遣いにやはり甘えてしまう自分に少し苦笑
しながらミーナは無理やり少しだけ微笑んだ。

 「折角私の意識が戻って、お前が近くにいるんだ。」いつものような心が休まるような会話でもしようじゃないか。
まだミーナの瞳に残っている涙を見ないようにわざと坂本は大げさに眼を細め、小さく笑った。
 
「過去の話はもういいだろう、未来の話をしよう。」私たちはまだまだ生きていくんだからな。そう言って坂本は四角い枠で囲われた夜空に目を向けた。先程までは全く気がつかなかったが、小さく星が瞬いている。なんだ、ちゃんと空気を読んでいる奴も居るんじゃないか、と坂本は少し気が晴れたような気がした。

「今夜は、星が出ているんだな。」お前も目の前と下ばかり見てないであれを見れば少しは気が晴れるぞ。
とりあえず、どう考えてもその場凌ぎでしかない口にした坂本は次の言葉を探した。探すのに苦労する、と思っていた未来を語る言葉は意外と素直に坂本の口から流れ出した。

 「そうだな、私は扶桑に戻る。」そして伝え続ける。歩いてきた生き様と飛び方、落とし方そして救い方のうちの一つをな。
「お前も、扶桑に来ればいい。」カールスラントが解放されて、ウィーンで大好きな音楽を学べるようになるまで。扶桑の温泉に浸かって、扶桑のじゃがいもを食って。
そして私にはなかなか教えられないことを一緒に若い連中に叩き込んでやろうじゃないか。

 流れ出すままにそう一息に言い切り、さすがにそろそろ体力の限界なのだろう、少し顔をしかめた坂本の「…すまないが、横に
なりたい。手を貸してくれないか。」という言葉の「…すまない
が」で既にミーナの手は坂本に添えられていた。全く、こいつにはかなわないな。と坂本は思った。

 「…私は、訓練が始まると夢中になるからな」お前が居るといろんな意味で本当に助かるんだ。
「今みたいにな、手を貸して居てほしいんだ。」

 …怪我をしていると言っても甘え過ぎだな。いくらなんでも扶桑に来い、はないだろうと坂本は自分の口から滑り出た言葉に苦笑した。

「カールスラントが解放されたら。」そうしたら、扶桑の温泉に浸かって丸いオニギリを毎日食べて、いつも豪快に笑う美緒の隣に居て、やり過ぎた指導がないように十分に注意しながら優秀な指揮官を沢山育てる…そういう生活も良いわね。
 先程の苦痛に満ちた表情ではなく、むしろ晴れやかな顔で坂本の前でミーナは涙を流しながら応えた。
 
 「だって私たち、まだ二十歳かそこそこの小娘にすぎないの
よ?」ウィッチとしてのタイムリミットは見えているかもしれない、でも生きていく時間のタイムリミットはまだまだ先の話よ。だったら私はやりたかったこと、やりたくなることを全てやり遂げるわ。そう言ってミーナは魔眼ではない一人の人間としての坂本の目をただまっ過ぐ見つめた。
 「ずっとあなたの隣に居ること、これはもちろんやり遂げる。
必ず。」

「だから、貴女は先ずは眠ることね。本当に長期戦は体と心に
負担がかかるんだから。」そのミーナの言葉が終わらぬうちに、坂本の穏やかな寝息が規則正しく光と音を発する装置の動きとともに聞こえ始めた。

 「全く、本当に扶桑の魔女は…。」そう言って坂本の眠る病室の扉をそっと閉めそれにもたれかかった。
しんとしている廊下を執務室へと歩き始めたミーナは溜まりに溜まった書類に憂鬱な溜息を洩らし、そして彼女が歩く先をほんのり照らす月に目を向けた。
将来、いつか実現させるそう誓った扶桑での生活に思いを馳せながら。
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プロフィール

HN:
たまじま
性別:
非公開
自己紹介:
2011年3月:二次創作を再起動しました。
アメカジ、二輪、百合を好みます。
犬も猫もハリネズミも好き。

連絡先:
rally■happy.odn.ne.jp

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